202038日(日)、世界各地でマラソン大会や大規模なイベントが相次いでキャンセルされるなか、ロサンゼルス・マラソンは、カリフォルニアらしい絶好のマラソン日和のもと華やかに開催されました。当日は最低気温約10度、正午の気温が18~19度。薄曇りながら、時折パームツリーの背後に青空が顔を覗かせ、いかにもロサンゼルスという、皆が羨むような素晴らしい一日となりました。

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Runners Magazine
月刊ランナーズ6月号に見開き2ページで掲載されたレースレポート

今年で
35回目となるロサンゼルス・マラソン、参加者は約27千人。ニューヨーク、ボストン、パリ、ロンドン、ベルリン、東京などと並んで世界のトップクラスに入る規模。ロサンゼルスの街を見下ろす小高い丘の上にある、ドジャース・スタジアムをスタートし、サンタモニカで青い海と多くのギャラリーに迎えられゴールする、聞いただけでも心が躍るコース。

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10年練続参加の記念で貰ったパーカーとメダル

さて、コロナ危機が世界を襲い、カリフォルニア州もState of Emergencyと呼ばれる、非常事態宣言下での開催となった、今年の大会。3月に入ってもキャンセルの話は全く耳にせず、意外なほど静かにレースの週末を迎えました。ゼッケンやティーシャツを受け取るために訪れたエキスポ会場でも、特に例年と異なった様子はなし。唯一気が付いたのは、手を消毒する殺菌剤が多数置いてあることくらい。同日聞いた話によると、中国、韓国、イタリアなど、感染者の多い国からの参加は禁止となったとの事。レース当日の具体的な対策はというと、ボランティアの人たちの殺菌剤利用の徹底、スタート・ゴールを含むコース上への殺菌剤の設置。ハイタッチなど人との接触は避けるようにする、周囲の人たちと出来るだけ距離を取る。更には、体調が良くない人は自主的に参加を見あわせなさい、と言うメッセージ。風邪やインフルエンザ対策同様に、当たり前の事をするべしというもの。身構えていただけに、少し拍子抜けではありましたが、おそらく、他に取れる対策はないのでしょう。という事で、これらの対策を念頭に置いて、レース当日を迎える事となりました。


例年とは異なった環境下で開催となった、今回のロサンゼルス・マラソン。私にとって10年連続出場となる記念すべきレース。折角の機会なので、何か一味違った事をしたいと考えていました。自己記録狙いは、ありきたり。と言うより、昨年末に初挑戦した100マイルレースに向けて、半年かけて長距離のトレーニングをしたものの、スピードトレーニングは暫く行っていないのが現実。更には例年、 B枠あるいは、 C枠の優先スタート枠を貰っているのですが、今大会から仕組みが変わり、不覚にも優先枠登録の機会を逃してしまいました。いろいろ重なって、とても好タイムは望めそうもない。何かないかなぁと、考えていたところ思いついたのが、最後尾からのスタート。後方から走り始める事によって、タイムを気にせず、いつもと違った風景を見ながら、新鮮な気持ちで走る事が出来るだろうと、思ったわけです。さらに、レースが近づくにつれてコロナ対策が叫ばれ始めました。幸いにも後方からスタートすれば、スタートラインの人混みを避けられるという事で、一石二鳥。グレート・アイディア!


真夜中に野生のピューマと遭遇!100マイルレースのレポートはこちら


当日は、早朝
4時に家を発ち、車で30分ほどの距離にあるドジャーススタジアムへ。例年であれば、ゴール地点であるサンタモニカに乗り入れて、そこからシャトルバスでスタートとなるドジャース・スタジアムへ向かうのですが、優先枠同様に、サンタモニカの駐車場の事前予約もうっかり忘れてしまい、気が付いた時は時遅し。既に駐車場は空きなし。という事で、直接スタートラインへ向かう羽目に。10年連続で参加しているのに、間抜けな奴だと思われるでしょう。まぁ確かにそうなのですが、レース申し込みが始まった昨年10月あたりは、100マイルレースのことで頭がいっぱいで・・・と、しょうもない言い訳。

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スタート前のまだ暗いドジャーススタジアム

ドジャース・スタジアム入りし、ジェルなどの携行品を再確認し、準備完了。いざ出陣と思いきや、スタート時間の
655 分には、未だ2時間近くある。という事で車の中でひと眠り。今回は、最後尾スタートという事で、「30分前には優先枠に入ってなくては」やら、「ストレッチやウォーミングアップをしなければ」といった類のプレッシャーは一切なし。愛用のガーミンのタイマーをセットしなければ、寝過ごしてしまうほど熟睡してしまいました。


スタートの1時間前を目処に車を後にし、いざ最後尾へ。ぶらぶらと緊張感なく列の後方めがけて歩き、途中トイレに立ち寄って、最後尾の金網の脇で緊張感なく過ごし、持参したエナジーバーを食し、念のため、またトイレに行って。そうしている間に一時間が過ぎ、恒例のアメリカ国歌。アマチュアシンガーの歌声が、はるか遠くにあるスピーカーからおぼろげに聞こえてくる。そして、待望のカウントダウン。アー・ユー・レディー
? スリー、ツー、ワン、ゴー!

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人もまばらな最後尾。三つのボールをドリブルする、背番号24番のオジサン

しかしその後、5分経過。そして
10分経過しても、周囲のランナーが動き始める気配は無い。漸く15分経過したころから、ボチボチと前進が始まり、スタート地点が見えてきたのは、なんと20分以上も経ってから。すぐ前にいるのは、先日、ヘリコプター事故で若くして亡くなったLAレイカーズのスーパースター、コービー・ブライアントのユニフォームを着て、三つのバスケットボールをドリブルしながら歩くオジサン。間延び感いっぱいで辿り着いたスタートラインの脇には、なんとLAドジャースの三塁手ジャスティン・ターナー。最後のランナーが走り去るまで、辛抱強く微笑みながら手を振っている。さすがに皆から慕われているだけのことはある。

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ランナーに声援を送るドジャースの三塁手ジャスティン ターナー。赤毛の顎髭がトレードマーク

レース開始のホーンが鳴ってから
27分の後、やっとの思いでスタートゲートをくぐり、ドリブルするコービー・ブライアントを追い抜いて、漸くここからレースが始まる。人がまばらな下り坂を駈け下りる事、10分程度。前方に大勢の人が見えてくる。そうこうする内に、周りは人だらけ。前も後ろも横も、人、人、人。歓談しながら歩いている人、お手玉をしながら走る人、オットセイの様に頭にボールを乗せてバランスを取りながら歩く人。車社会のロサンゼルスで、これほど沢山の人に一度にお目に掛かれる機会はそう頻繁にはない。チャイナタウンは通勤時の新宿駅の様そう。


延々と続く人波を右へ左へと動きながら走る事、数マイル。あまりの人の多さに既に人疲れ状態。今回、最後尾スタートで楽しもうと決めたものの、ボストンマラソン出場を目指すランナーとしては、いかなる状況下でもサブフォー(4時間以内での完走)はキープしたいところ。という事で、マナー違反と知りながらも、何とかして前に進む道を切り開かざるを得えない。隙間を見つけては、さっと飛び込んで抜いて行くことの連続。幾度となく肘鉄を食らい、「ソーリー」と謝りながら横をすり抜け、人の少ない歩道があればピョンとジャンプし、ホームレスが寝泊まりするテントの脇をすり抜けて・・・と障害物競走さながら。その間も、左腕のガーミンをチックし、何とかマイル
9分のペースをキープ。


行けども行けども、果てしなく続く人の壁。ふっと頭に浮かんだのは、とある映画のいちシーン。ゾンビと化した群衆と、家族を守るために戦う男。ゾンビと違って、ランナー達は襲っては来ませんが、肘うちや、蹴り攻撃はお手の物(無理して抜いていく、こちらが悪いのですが・・・)前方に立ちはだかる群衆をかき分けて、ひたすら進む様子は、まさにゾンビ群との闘い。エイドステーションに群がるゾンビ。トイレの前で礼儀正しく列を作って待つゾンビ。亡くなった家族の写真をプリントしたティーシャツを着て、冥福を祈ってひたむきに走るゾンビ。後姿がとっても魅力的なゾンビにも遭いました。

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写真:Conqur Endurance Groupより
遠方に望むハリウッドのサインと、疎らに(?)なったランナー達

ハリウッドサインが高台に見えて来る
10マイル(16㎞)あたりになると、人の波もだいぶ疎らになり、ゾンビ妄想も頭から消え去りました。人混みから解放され、周囲に目を配る余裕が出てくると、沿道で声援を送る多くの人たちが見えてきます。ハリウッド・ブルバードにはコロナ危機にも関わらず、例年同様に多くの人たち。米国は移民の国。人種の坩堝(ルツボ)として知られていますが、その中にあってもロサンゼルスはかなり特殊。人種・国籍の多様性みならず、ホームレス、不法移民、億万長者、LGBTなど、本当に様々な人たちが暮らしています。ロサンゼルスの街を貫くLAマラソンのルートはまさにその縮図。チャイナタウンに始まり、ダウンタウンのホームレスが集うテント村、Students Run LA (SRLA)という、低所得家族を支援する団体からのサポートを受けて走る中高生の集団、ターバンを頭に巻いてオレンジを配るアラブの人たち、ベランダに掲げたレインボー旗の横から声援を送るゲイのグループ。ロデオドライブの見るからにリッチなマダム達。これらの人たちがボランティアとしてレースをサポートしたり、疲れ切って歩いているランナーに励ましの声を送ったり。コーナーを曲がるたびに、異なった文化やバックグラウンドを持つ、多種多様な人達から送られる暖かさを、肌で感じる事が出来ます。普段は別々のコミュニテーで暮らし、触れ合う事の少ないこれらの人々。ロサンゼルス・マラソンは、ランナーへの応援を通して、これらのコミュニティーを結ぶ絆の役割を果たしてるとも言えます。
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SRLAの学生たち。例年、黄色いティーシャツを着て数百名単位で参加する。スタート地点にて

コロナ危機が叫ばれる今年の大会でも、ボランティアの人々の献身的なサポートや、沿道からの声援は変わることはありません。ゴールを目指して走るランナーへの鼓舞と共に、家に引き籠らずにレースをサポートすることによって、「コロナに負けないぞ」と、自らを励ましている様にも見えます。


ハリウッドを後にして、サンセット・ブルバードを下り、ビバリーヒルズ、ロデオドライブを駆け抜け、
18マイル(29㎞)付近。センチュリーシティーで例年楽しみにしているのが、ジュニアハイスクールのチーアーリーダー達。以前、私の娘がハイスクールでチアーリーダーをしていたこともあって、いつも、とても微笑ましいい気分でこのエリアを走ります。毎年4~5校が参加しているのですが、一向に姿が見えません。やはりコロナの影響で、今回はキャンセルかなぁと、思いながら走り続けると、数百メートルほど先にいました。ポンポンを振り回しながら、大声で愛らしく声援を送っています。


マイルを重ねて行くうちに、スタート地点では薄曇りだった空から太陽が見えてきました。気温が上がりはじめ、周囲のランナーはかなり辛そう。21マイル(33㎞)辺り。高架のフリーウェイをくぐる100メートルほどの日陰では、ストレッチをしながら、小休止している数人のランナー。ここまで、人の波をかき分けて体力は使ったものの、ペース的には比較的スロー。という事で、これからが本番。カフェインの効いたジェルを摂り、ラストスパートの準備。その前に・・・例年、ここから数ブロック先で振舞われる、チョイ飲みビールを楽しみにしているのですが、今年もあるだろうか?


青い海まで真っすぐ伸びた一本道、サンビセンテ・ブルバードは、多くのランナー達のお気に入りのセクション。22マイル(35㎞)から25マイル(40㎞)間の約5㎞に渡って、道幅の狭い緩やかな下りが続きます。疲労が極限に達しているランナーにとって、緩い下りと、間近から掛けられる声援は天からの贈り物。

疲労困憊したランナーたちを横目に、カフェインに次いで、冷えたビールを喉に流し込みゴキゲンな私は、絶好調で、ここでも抜きまくり。事前の予報では小雨もありと言われていたのが、すっかりハズレ。ロサンゼルスらしい真っ青な空が顔を出して来ました。この時ばかりは、沿道で声援をお送る人たちも、最後の力を振り絞って走るランナー達も、コロナの事はすっかり忘れていたことでしょう。緩い下りを駈け下りると、太平洋が眼下に見えてきます。最後の一マイルは、青空を背景にパームツリーが茂る、オーシャン・ブルバード。ゴールは間近。晴れた空から降り注ぐ太陽に希望を見出したのは、私だけでしょうか?

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晴れ渡った青い空は、皆に希望を与えてくれる。10年連続出場の記念パーカーを着て、ゴールにて

海から吹く風を頬に受け、かつて経験したことがないほど、すがすがしい高揚感に包まれてゴール。やっぱり、ロサンゼル・スマラソンは楽しい!フィニッシュ・タイムは、自己記録には遠く及ばないものの、当初目標としていた4時間を切る、3時間55分。順位は総合で2,736位。参加者が約27千人なので、追い抜いたランナーは、何と24千人超!10年目の記念大会、今回も楽しませてもらいました。ボランティアの皆さんや、沿道から声援を送ってくれた皆さんに心から感謝!

後日談:


レースが終わって一週間、米国の状況は日々深刻化し、ヨーロッパ便のキャンセル、コンサートやスポーツイベントの取りやめ、全米ほぼすべての州で学校が休校となりました。


二週間目には、大統領による国家非常事態宣言。多くの州で、外出自粛の要請が出され、レストランはテイクアウトのみ。小売店は日常生活に最低限必要な物品を販売するスーパーなどを除きクローズ。映画館やモールも当然すべて休業。会社勤めの人たちも、ほぼ全員が在宅勤務を余儀なくされています。普段は車で溢れかえる、片側
6車線のフリーウェイも、がらがら。


そして、三週間目、感染拡大が収まる兆しは見えず。ロサンゼルス近郊のビーチやトレイルも閉鎖され、人との接触の少ない、野外活動すらも儘らない状態となっています。皮肉にも、この度のマラソンのエキスポ会場として利用され、多くのランナーで賑わっていたコンベンションセンターも、ベッドや様々な医療器具が搬入され、仮設病院へと姿を変えました。
WHOによってパンデミックが宣言され、感染拡大を抑える事が、地球規模での最重要課題となった今日、第35回ロサンゼルス・マラソンが、コロナ収束までは、最後の大規模なマラソン大会となる事は疑いの余地もありません。全世界が一丸となり、この危機的状況に立ち向かい、一日も早く皆が安心して暮らせる日が戻ることを願って止みません。


By Nick D