アメリカで最も高い山といえば、アラスカにあるデナリ山。標高は6,190m。かつてはマッキンリー山と呼ばれ、冒険家の上村直美さんが還らぬ人となった山としても知られています。アメリカ峰々の上位10位までは全てアラスカ州にそびえ立っています。さて、アラスカを除くアメリカ本土で一番高い山は?と尋ねられて答えられる人はかなり稀です。コロラド州のロッキー山脈あたりと思いきや、実はカリフォルニアにあります。ロサンゼルスから北に約400㎞。シエラネバダ山脈、セコイア国立公園の東の端にあるホイットニー山(Mount Whitney)。標高は4421m
にほんブログ村 旅行ブログ アメリカ旅行へ
にほんブログ村
Peak
(紺碧の空に尖ったホイットニー峰が映える) 

 

興味深いのは、この最高峰がアメリカ本土で一番低い地点から直線距離で100マイル(160㎞)程度の場所に位置しているという事。広大な国土を持つアメリカで100マイルは目と鼻の先。言い換えれば、最高地点と最低地点が隣り合わせ。この最低地点が何処かというと、デスバレー国立公園の中心部近くにあるバッドウォーターというポイント。標高はと言うと、なんと海抜以下のマイナス86m
A41400AF-46F5-47D5-B127-F911A01815A8
(バッドウォーター周辺に広がる塩の荒地)

デスバレー国立公園とは名前の通り、草木もほとんど育たない、死の谷を思わせる乾燥した荒野。降雨量は限りなくゼロに近く、年間を通して一滴の雨も降らない年が、1929年と1953年の二回に渡って記録されています。周囲を山に囲まれた谷に稀に降る雨は行き場を失い、海抜下のバッドウォーターに留まります。やがて雨水は灼熱の太陽で蒸発し、ミネラルのみが残りゴツゴツとした塩の地表を作り出します。この死の谷は、かつて華氏134.1度(56.7℃)の世界最高気温を記録した灼熱地獄としても知られています。

E5E66E59-9059-4272-B05C-BEAAECC29A19
8月末のバッドウォーターにて。気温は何と52度。背景の白い地面は舐めると濃い塩味)

バッドウォーターから西にアップダウンを繰り返し、
135マイル(217㎞)行った所にあるのが、ホイットニーポータル。米国本土最高峰ホイットニー山への東の登山口。標高2,530m。なんと、この135マイルを気温が最高潮に達する7月に走るレースがあります。制限時間は48時間。その名も、バッドウォーター135、世界で最も過酷なレースと呼ばれています。2019年には日本人の石川佳彦さんが大会新記録の21時間33分で優勝しました。
4CA6903D-5638-4693-8A88-F49B58854E36
このクレージーな超過酷レース、途中エイドステーションは無く、自らサポートのスタッフを準備し、水や食料など補給を全て自ら賄う必要があります。
1987年に始まった当初、ゴールは4,421mのホイットニー山の頂上だったとか。現在より11マイル長く、さらには2,000m近くも高い!。合計146マイル(234㎞)の距離を薄い酸素に喘ぎながらも、5名が完走したそうです。
A83ECBC7-AD5E-450B-86A8-D13422994BCD
(コース途中にある砂丘。スターウォーズの第1作目「新たなる希望」の一部はデスバレーで撮影された)

その後、ホイットニー山への入山制限ならびにパーミット制度が導入され、今のバッドウォーター
135になったとの事。私もウルトラマラソン・ランナーの端くれとして、この世界で最も過酷なレースに全く興味がないと言ったら嘘になりますが、まだ長生きしたいので、暫くは頭の隅に押しやっておきます。

Badwater 135 http://www.badwater.com/event/badwater-135/

BD984FF4-45A4-4003-B435-22E0CA1A84AB
(デスバレーの荒涼とした景色を背景にジャンプ)

さて、ホイットニー山はと言うと、夏でも頂きに雪をかぶる米国本土最高峰は
51日から111日までが登山シーズン。この時期は比較的天候も安定しています。よく整備された登山道は、ほぼ頂上まで全域に渡って緩い傾斜が続いており100%、Runnable。よって、走って登る事も不可能ではありません。とは言うものの、4000mを超える高度では、のんびり歩く登山者でさえも、多くが高山病でひどい頭痛に悩まされます。低地から来るハイカーやランナーは高度順応をするのが理想。途中、キャンプ泊もできますが、近年、登山客が増えたため入山者を制限しています。一日に入山できる登山客の数はと言うと、日帰り100人、キャンプ60人。合計で僅か160人!事前にオンラインで申し込みをしますが、希望者が多いため、抽選に当たるのは一苦労。私も過去数年申し込みをしていますが、残念ながらハズレ続き。

IMGP0876
(朝日に照らし出される峰)

自分自身ではハズレ続きではありますが、過去に一度だけ、友人が運よく日帰りパーミット(許可証)を入手し、登頂の機会を得たことがあります。


私が登頂に望んだのは、とある年の9月。前日は東の登山口、ホイットニー・ポータルにてキャンプ。そこから頂上までの距離は約
18㎞。往復で36㎞、標高差にして、1,873m。朝1時に起床し、ヘッドランプを装備して2時から登山スタート。日帰りで明るいうちに下山するためには、午前23時の出発が望ましく、整備の行き届いたトレイルには、真夜中にも関わらずハイカーの姿が散見されます。途中泊をする登山者がキャンプをする小さな湖が点在するエリアで朝日を拝み、その後99スイッチバックと呼ばれる単調な折り返し。登り切った尾根からは、西側に広がるセコイア国立公園の絶景が待ち受けていました。
IMGP0946
(セコイア国立公園を後方の望む尾根にて)

果てしなく続く
99ものスイッチバックの単調な登り、低酸素で喘ぐ肺、高山病で痛む頭。尾根に辿り着き開けた視界の先にある景色を見た時には、これらの辛さが吹っ一気に飛んだのを、今でも鮮明に記憶しています。

IMGP0934
(頂上へのルート。独特の景観が続く)

そこから、雪の残る尾根道を伝い山頂を目指しましたが、私を含む一緒に登った
5人、程度の差こそあれ皆一様に頭痛に悩まされました。全員フルマラソンをサブフォーで走る、体力には自信のある者たちでしたが、4,000m超の低酸素環境は、少なからず堪えました。頂上でひと時を過ごし、33㎞の行程を歩き切りポータルに戻ってきたのは、既にあたりが薄暗くなった午後7時。所要時間は17時間。その足で、麓の町ローンパインへ。一路、中華料理屋に駆け込み祝杯!
IMGP0918
(頂上付近には雪が残っていた)
 

その後も、幾度となくパーミットの申し込みをしていますが、幸運の女神が微笑むことなく数年経っています。次回は、トレイルラン用のシューズを履き軽装で歩いて登り、下りは走ってと考えておりますが、いつになったら叶うことやら。
E029FD43-5C18-4EA3-8422-82F2C9051FEF
(山頂でのお決まりのジャンプ) 

 

ワンポイントアドバイス

登山シーズンである51日~111日の期間の抽選申し込みを毎年21日~315日に受付ます。結果が発表になるのは324日。日付指定で申し込みとなりますが、これでもかというくらい希望日を入れる事が出来ます。10以上の希望日を申し込めるはずですので、週末と比較的人気の無い平日とを織り交ぜて申し込むのが良いと思います。ハズレ続きなのであまり説得力はありませんが・・・

パーミット申し込みサイトはこちら:

https://www.recreation.gov/permits/233260


後日談:
2020年も性懲りもなく、12の希望日を登録してパーミットの申し込みをし、首を長くして3月24日の抽選結果の発表を待っていました。本日届いたメールがこれ。またもやハズレ。

E3860386-5681-46FA-9024-D790428229E0

後日談その2:
2020年夏に再びデスバレーに。気温はなんと55℃。砂丘を走り、渓谷を流れる熱風を浴び、想像を絶する酷暑の世界へ。レポートは
こちらから


By Nick D