走るという行為は極めてプリミティブな行為である。そして、そのプリミティブな行為を楽しいと感じる人が世の中には少なから存在する。私自身もその一人。人間の快楽の多くは、食べる事や性行為といった生存に直結した動物の本能に近い部分で感じるもの。ホモサピエンスは直立歩行により効率的に長距離を走る事ができる体を得て、独特な狩りの技を身に着けて生存競争を勝ち抜いたという説がある。走る事がサバイバル本能に基づいたプリミティブな欲求を満たすものと考えれば、ランニング中に高揚感に包まれるランナーズハイなる現象も、走る事を楽む感覚もある程度説明がつく。


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ホモサピエンスの進化論はさておいて、プリミティブな喜び云々といっても、好んで100マイル(160km)を走る者が世の中にそれほど多くいるとは考え難い。何でこんな事になってしまったのか?いよいよ100マイルレースが1.5ヵ月後に迫っています。今更ジタバタしてもしょうがないので、ここで改めてレース6か月前に挙げた5つの課題をおさらいしてみよう。

6ヶ月前の課題の挙げ出しはこちら:

 

課題1. 適度な走りこみ

何をもって「適度」というか甚だ疑問ではありますが、過去のトライアスロンやウルトラマラソンのトレーニングの経験を基に、体に過度の負担を掛けずに走り込める距離として設定したのが、ピーク時の月間走行距離で350km400km。これまで、4293km5290km6290km7282km8357km。そして、先週末までの直近の3週間は毎週100㎞をキープし、月間距離400㎞超のペースで9月中旬を迎えました。ほぼ予定通りの走り込み具合。ここから11月のレースまでの6週間は、テーパーリングと呼ばれる期間。蓄積した疲労を軽減するべく徐々に距離を減らしていきます。毎週、10%程度づつ削っていく感じでしょうか。これまでのトレーニングでの最長距離は6月のグランドキャニオン南北リム往復の72㎞。次いで、7月のオフィスからの夜間帰宅走61㎞。最後にもう一度くらい長めの距離を走っておきたいところ。ということで昨日、金曜日の夜から土曜日の朝にかけて49㎞を実施。いい感じの仕上がり具合です。ここまで来たらあとは、無理をせずに怪我なしでレース当日を迎えるのみ。

課題2. 体幹トレーニング

カイロプラクティスの先生にビーフジャーキー呼ばわりされた腰は未だに本調子とは言えませんが、腹筋、側筋、バランボールのトレーニングで違和感はだいぶ収まってきました。さらに最近使い始めて非常に効果的なのがボールによるマッサージ。痛みを我慢してマッサージを続けること約一か月。ずいぶん楽になってきて、走っている最中は痛みをほとんど感じなくなりました。まだ一か月超あるので、さらなる効果を期待しています。もう一つ、ごく最近購入したのが懸垂用の器具。これで、(当然懸垂もしますが)ぶら下がって背骨を伸ばす様にしています。これがまた気持ちい。ということで、ビーフジャーキー対策も何とか進んでいます。
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(仰向けに寝転がって右側の黒いボールを腰にあて、体重を乗せて指圧風にマッサージ)

課題3. 夜の眠気対策

レース前3か月の記事でお伝えした、オフィスからの8時間帰宅ラン。何故か多くの同僚の知るところとなり、皆から変人呼ばわりされる羽目になってしまいました。周りの目はさておき、深夜の8時間走で自宅に帰り着いたのが午前2時半。眠気対策には一定程度の効果はあったので、もう一度くらいは試してもいいかなぁという感じ。されど、夜中のサンフェルナンド・バレー(帰宅ルート上の地域の名前)の一部はホームレスやギャングがいて治安の悪い所もあるし・・・ということで、今回はルートを変えることにしました。実施は昨日、金曜の夜。仕事を終えて一旦帰宅。夕食をとって少しっゆっくりして、午後11時にスタート。近所の慣れ親しんだルート50㎞を6時間かけてのんびり走って早朝5時に家に到着。通算で24時間以上起きていたことになりますが、特に眠くなることもなく無事に走り切ることができました。二度の真夜中ランのお陰で、夜通し走れる目処がつき、かなり楽な気分でレース当日を迎えられそうです。

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 (町中に張り巡らされた自転車ルートを30.5マイル(49㎞)夜中に一人トボトボと)

課題4. メンタルの強化

雨にも負けず、灼熱の太陽にも負けず、吹きつける極寒の風にも負けず、疲労や眠気にも負けず、真っ暗闇の山中での孤独にも負けず・・・と、幾度となく繰り返していますが、ウルトラマラソンをにはメンタル・タフネスが必要不可欠。グランドキャニオン単独ランをした後も、近所の真っ暗闇の山中を走ったり、40度の灼熱の太陽の下を走ったりと、敢えて過酷な環境に身を置いてのトレーニングをしてきました。唯一できていないのが雨風・寒さ対策。なんといっても、南カリフォルニアはいつも青空で、生贄を添えて雨乞をしたものの全く効果なし。今回のレースの舞台となるのは北カリフォルニア。11月の気候は何でもありで、30度を超える日もあれば、はたまた冷たい雨が一日中降り続けることも。雨はアリゾナの100㎞レースで懲り懲り。
 

冷たい雨が降り続いたアリゾナ100㎞レースの様子はこちらにて:

 

これまで、できる限りの準備はしてきたので、ここまで来たら、あとは運を天に任せて自分のメンタリティーがどれだけ強いか、出たとこ勝負で試すのみ。レース中に極度の疲労と睡眠不足により幻覚を見たり、幻聴を聞いたりするランナーもいるとか。自分が極限の状態でどうなるか結構楽しみというのが正直なところ。まぁ、何なんとかなるでしょう。

 

課題5. 栄養補給

何度か触れていますが、トライアスロンでもウルトラマラソンでも長時間のレースになると、栄養補給が極めて重要となります。レース中に必要なカロリーを摂取しないと、ガス欠となり動けなくなってしまいます。ハンガーノックと呼ばれる現象。走り続けるためには多くのカロリーが必要となりますが、かまわず高カロリーのものを食べれば良いというものでもありません。長時間のレースでは内臓にも大きな負担がかかり、疲労した胃袋に無理やり食物を入れると、体が拒絶反応を起こして吐いてしまったり、たちまち下痢をすることも珍しくありません。どちらの場合も必要な栄養を摂取することができずに途中リタイヤは必至。普段食べ慣れたものでも、レース中の疲れた体が受け入れるとは限らないので、トレーニング中にひたすら色々な物を試すことが肝心。私の場合は過去の経験から15~16時間程度まではTailwind Nutrition(粉末ドリンク)で最低限の栄養補給なんとなりそうな目処がついています。当然、最低限の準備だけではなく、プラスアルファーのカロリー補給の準備も抜かりなくする必要があるため、これまでも様々なものを試してきました。昨晩の夜通しランでも、遠足のお菓子さながらのポテトチップやオレオクッキーを持参し、立ち食いならぬ走り食い。かなり高カロリーのジャンクフードにも慣れてきたので、あとは当日のコンディション次第。さて肝心のレース日のプランはというと、ざっとこんな感じ。

水分補給:1.5Lハイドレーションパックにて。給水所では次のエイドステーションまでの距離を見て必要な水の量を判断。摂取量は当日の天候に拠るところがおおきいですが、日中は最低でも一時間300mlはコンスタントに摂りたいところ。

栄養補給:メインのカロリー補給はTailwind粉末ドリンク。一袋で200kカロリー 。これを1時間に一袋の割合で飲んで最低カロリーを確保。方法はというと、給水所ストップ毎に次の給水所までの所要時間を計算して、ベストの胸ポケットに収容できる600mlの小さなめのボトルに必要な量のTailwindを入れる。次の給水所まで3時間を見込んでいれば、ボトルに3袋を入れて水で薄める。区間ごとにこれを飲み切って最低カロリー消費をコントロール。合わせて愛用のストリンガーワッフルとジェルで追加エネルギーを補給。ワッフルが約150kカロリー、ジェルが100kカロリー。これらを組み合わせて事前準備した栄養補給源から毎時300kカロリーを摂取というプラン。300kカロリーを30時間ということで、ここまでで合計9,000kカロリー。

と、口で言うのは簡単ですが、実際には走りながら時計を見て、「あっ、メシの時間だ」と決まった時間に栄養補給をするのは至難の業。口の中はパサパサで食べ物は喉を通らないし、同じものばかり食べるのも楽ではない。さらに時間を追うごとに消化機能も落ちてくる。今までのレースではプラン通りに事が運んだのは皆無。更に実際には毎時500kカロリーくらいの栄養補給をするのが理想。ここで必要となってくるのが、ジャンクフード。途中の給水所は、コーラなどの炭酸飲料を始め、ポテトチップ、クッキー、ピーナッツバター・サンドイッチ、チョコレート、ガミーベアーなど高カロリーのジャンクフード天国。これらでカロリーを補うのが極めて重要。今回のレースではジャンクフードが完走のカギを握っていると言っても過言ではない気がします。これがこれまで繰り返してきたジャンクフード・トレーニングの背景。結果は如何に?と言う事で、粉末ドリンクやジャンクフード全てひっくるめて、30時間の合計カロリーはと言うと、何と15,000kカロリー!6週間後のレースが楽しみになってきました。

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(今回の「朝まで走り続け」トレーニングで準備した遠足用のお菓子)

満を辞して迎えた、RDL100レースの様子はコチラ

 
レース後の振り返りはコチラから:


By Nick D